Google Cloudは2026年10月8日(米国時間)、イベント「Gemini at Work 2026」で「Gemini エージェント」を発表しました。つまり、質問に答えるだけのAIから、目標を渡すと資料やコードなどの完成品まで進めてくれるAIへ、会社向けのGeminiが広がったということです。
公式ブログの言葉では「指示ではなく目標を与える」使い方です。Web、スマホ、Slack、Microsoft 365など複数の場所から呼び出せ、端末を閉じたあともクラウド上で作業が続きます。
この記事は公式ブログ、製品ページ、FAQ、エディション文書(2026年10月10日時点)に基づきます。実際のアカウント登録や利用は行っていないため、公式に書かれていることと、まだ示されていないことを項目ごとに分けて書きます。
迷ったらこれ|まず無料の30日トライアルで「自社が対象か」を見る
Google WorkspaceやGoogle Cloudをすでに使っている組織は、Gemini Enterprise の Plus エディションの30日無料トライアルから入るのが現実的です。 製品ページによると、Plusは営業担当を通さずに30日間無料で試せます。営業への相談から始めるより、手元の画面で確かめられるのが得です。

ただし、トライアルで今回の新機能が使えるかどうかは、公式に保証の記載がありません。後述のとおり、目玉機能の一部は早期アクセス(限定公開)です。
最初の5分でやることは次の2つです。
- 製品ページで、自分の組織が使っているツール(Workspace、Microsoft 365、Slackなど)が連携先に入っているか見る
- 自分の仕事から「毎日繰り返す、ツールをまたぐ作業」を1つ書き出す
向かないのは、データの扱い方針がまだ決まっていない組織や、いますぐ日本での料金を確定させたい人です。料金と日本での提供時期は示されていないため、待つ判断も妥当です。
何が変わったか|Before → After
| これまで | Geminiエージェント | |
|---|---|---|
| 頼み方 | 資料やデータを貼って、毎回細かく指示する | 目標を渡し、完成した成果物を受け取る |
| 作業の流れ | 答えが出たら、人が次の作業へ運ぶ | 作業の割り当て、完了までのスケジュール、出来事に応じた起動を指示できる |
| 前提知識 | 毎回、状況を説明し直す | ツール・データ・作業履歴をすでに把握していると公式が説明している |
| 続き | 画面を開いている間の対話 | 端末を閉じても、数時間から数日かかる作業が進む |
公式ブログは、質問への回答、ナレッジワーク、画像やメディアの作成、コードの記述と実行を、1つのエージェントで扱うと説明しています。

たとえば「来週、いつもの地域イベント担当チームとの会議を設定して」という依頼は、公式が挙げた例です。日程調整のように、複数の人と予定をまたぐ作業を任せる場面が想定されています。
仕組みをかみ砕く

「ツール・データ・作業履歴を把握している」とは
公式は、新入社員のようにオンボーディングして、作業の前にユーザー・ツール・チームについて学ぶと説明しています。読者にとっての意味は、毎回「うちの会社ではこう」と説明しなくてよくなることです。
記憶は4種類あります。
- 作業中の内容を覚えるセッション記憶
- 業務の知識を構造化して持つ記憶
- 手順を覚える記憶
- 過去にやったことを覚える記憶
データについて、公式は次の2点を述べています。
- プロンプトや出力は、Googleのモデルや他の顧客のモデルの学習に使わない
- データを元の場所に置いたまま、各ユーザーの既存の権限に従ってアクセスする
「端末を閉じても進む」とは
クラウド上で動くため、PCを閉じても処理が続きます。製品ページのFAQには「長い仕事はGoogle Cloud上の専用の安全なマシンで動き、ログオフしても戻ったときに終わっている」とあります。どの端末から開いても、記憶やコンテキストは1つにまとまります。
公式ブログの表現は「永続的な実行」で、「24時間」「常時」という言い方は使われていません。この記事も「端末を閉じても進む」という公式の範囲で書いています。
人が見ていない間に進むので、事前に決めておくことがあります。
- 任せる範囲
- 人の確認が要る操作
- 覚えさせてよい情報
詳しくは後の「任せる前に決める3点」で扱います。
従来のGeminiの使い方との違い
公式の位置づけは「業務のための新しいひとつの汎用的なエージェント」です。チャットでの回答、自律的な動作、コード生成を1つの入り口で扱います。さらに、専用の画面を持たない「ヘッドレス」のエージェントとして、他社のアプリに組み込めます。
複数ステップの仕事では、固有のIDを持つ一時的なサブエージェントを自動で作り、並列や直列の手順を調整します。
どこで使えて、何につながるか
呼び出せる場所は、公式ブログによると次のとおりです。

- Web
- iOS/Android
- Windows/Macのデスクトップ
- コマンドライン
- Google Workspace
- Microsoft 365
- Slack
つながる先は、Googleのサービスに限りません。公式ブログに挙がっているのは次のものです。
- Confluence、Microsoft Office、Teams、Slack
- Google Workspace、Git、Jira、Salesforce、ServiceNow
- BigQuery、Databricks、Postgres、Snowflake
- デスクトップ上のファイル
MCPサーバー(AIが外部のツールやデータを使うための共通の接続規格)にも対応し、社内外のネットワークに置いたサーバーにつなげます。
製品ページには、連携先が「100超」とあり、NotionやLinear、Asana、GitHub、HubSpotなども載っています。使っているツールが連携先に入っているかが、最初の判断材料です。
Workspaceでの3つの働き方
Workspaceの中での動き方は、公式が3通りに分けています。

- パーソナルアシスタント: 会議の設定など、自分の代わりに動く
- プロアクティブな委任: AIが「任せられそうな作業」を提案する。重要なメッセージを理由つきで目立たせる
- チームメンバー(コワーカー エージェント): 人と同じように呼べる、チームの一員
コワーカー エージェントは、メール、カレンダー、Googleドライブ、会社のディレクトリへの表示を含む、自分専用のWorkspaceアカウントを持ちます。Chatのスペースにメンバーとして追加でき、@メンションで呼べます。
エージェントが見られるのは、ユーザーやチームが提供したコンテキストだけです。「同僚に頼むのと近い感覚で、AIにも仕事を振れる」ということです。
任せる前の管理の仕組みと、決める3点

公式が示す管理の仕組み
- エージェントごとに独自のIDを持ち、従業員と同様に管理する
- 管理者が承認するロールベースの権限
- 全アクションの監査証跡(人ではなくエージェントに紐付く)
- Agent Sandbox(独自のネットワーク境界)と Agent Gateway(AIのためのネットワークファイアウォール)
- ポリシーを一度作れば、全エージェントに一括で適用できる
任せる前に決める3点
人が見ていない間にも仕事が進むので、使い始める前に次の3点を自社の業務に当てはめて書き出しておきます。
| 決めること | 自分に聞く質問 | 公式の手がかり |
|---|---|---|
| 共有する範囲 | どのフォルダ・チャット・システムまで見せてよいか | 見えるのはユーザーやチームが提供したコンテキストだけ。権限は既存の設定に従う |
| 覚えさせる範囲 | 何を記憶させ、何は毎回消したいか | 記憶は4種類。学習には使われない |
| 支出の上限 | 1つの仕事にいくらまで使ってよいか | 公式ブログは「コスト制御機能を内蔵」と記載 |
支出の上限について、報道には「プロジェクト単位で上限を設け、達すると止まる」という記述があります。ただし、公式の日本語ブログにはこの記述も「Smart Routing」という名称も載っていません。導入前に提供元へ確かめる点として扱ってください。
いつ誰が使えるか|早期アクセス・無料トライアル・日本の状況

発表時点で使える機能と、早期アクセスの機能
製品ページには「ページ上の機能がすべて今使えるわけではない」という趣旨の注記があります。次の3点は早期アクセスで、「まもなく全顧客に提供される」とされています。
| 機能 | 状況(公式の製品ページ) |
|---|---|
| 複数ステップのバックグラウンドタスクを任せる | 早期アクセス |
| モバイル/デスクトップ版のGemini | 早期アクセス |
| サードパーティ製モデルの選択 | 早期アクセス |
「端末を閉じても進む」という中心的な特長は、この表の1行目に関わります。使える範囲は契約や環境によって異なる可能性があるため、トライアルの前提にしないでください。
使えるモデル
公式ブログは、現時点でGeminiモデルとAnthropicのClaudeを、仕事ごとに最適なものへ振り分けると書いています。将来は、その他のプライベートやオープンなモデルにも対応するとあります。一方、製品ページのFAQには「使えるモデルは今日はGoogleのGeminiモデル。追加モデルは近日」とあります。
2つの公式ページの記述が食い違っているため、断定せずに両方を載せます。
無料トライアルと対象エディション
- Plusエディションは、営業を通さず30日間無料で試せる
- FAQには、Businessエディション、Standard/Plusエディションの30日無料トライアルの案内もある
- エディション文書(2026年10月7日更新)にはBusiness、Standard、Plus、Pay-as-you-go、Frontlineの5つが載っているが、今回の機能名(Geminiエージェント、コワーカー エージェント、バックグラウンドタスク)の記載は見当たらない
文書は発表の前日付けの更新です。今回の機能がどのエディションで使えるかは、現時点では公式の文書から読み取れません。
料金と日本での提供
料金と日本での提供時期・条件は、公式ブログにも製品ページにも記載がなく、報道も「料金は示されていない」としています。早期アクセスの申込方法も案内されていません。
アジア太平洋向けの「Gemini at Work」が日本時間10月14〜15日に開かれる予定との情報があり、日本向けの情報が出る可能性があります。
日本企業の事例が示す「何を任せているか」
公式ブログの日本の事例は、いずれも Gemini Enterprise の活用例です。Geminiエージェント自体の成果ではない点に注意してください。

- SOMPOホールディングス: 3万4,000人の従業員向けに、1万を超えるカスタムAIエージェントを構築。ドキュメント検索や要約などを自動化し、新モデルの開発時間を1週間から1日に短縮したとブログにあります
- NTTドコモ: インサイト獲得までの時間を2週間から即時に短縮するデータエージェントを構築し、年間45万時間を創出したとあります
任せているのは、検索・要約・データ分析のような「ツールをまたぐ定型作業」です。自分の最初の候補を探すヒントになります。
向いている人・向かない人
| 向く | 向かない・まだ待つ | |
|---|---|---|
| 組織 | Google WorkspaceやGoogle Cloudをすでに使っている。複数のツールにまたがる定型作業が多いチーム | 使っているツールが連携先に入っていない |
| 準備 | 任せる範囲と確認が要る操作を決められる | データの扱い方針が決まっていない |
| 時期 | 早期アクセスの範囲を見ながら試したい | 料金や日本での提供条件が確定してから判断したい |
営業を通さず触れるPlusの30日トライアルは、「自社のツールが連携先に入っているか」「任せたい作業が動くか」を自分の画面で見るのに向きます。

同じく「仕事を任せ続ける」形のAIサービスは他社からも出ており、提供段階や対象で異なります。OpenAI dotsとは?できることと使い方やQueryPie「Aru」とは?任せられる仕事と始め方との比較も参考になります。
Plusエディションは営業を通さず30日間無料で試せる(今回の新機能が対象かは公式に記載なし)
Gemini Enterprise(Google Cloud) の無料トライアルを試す(公式)今日できる最初の一歩
- 製品ページで、自分の組織が使っているツールが連携先に入っているか見る
- 自分の業務から「毎日繰り返すツール横断の作業」を1つ書き出す
- その作業について、任せてよい範囲と、人が確認したい操作を分ける
3つ目まで書けた状態でトライアルに入ると、「これは試せる/まだ早期アクセスで試せない」の切り分けが早くなります。
公式の案内では、Plusエディションは営業を通さずに30日間無料で試せます。まず1つの業務について、対象になるか、どこまで任せられるかを見てください。今回の新機能が使えるかどうかは、トライアル画面と提供元の案内で確かめる必要があります。
もっと詳しく
他社の同種サービスとの位置づけ
同じように「仕事を任せ続ける」サービスは他社からも出ており、提供段階や対象は変わりやすい分野です。Geminiエージェント側の提供段階は、公式ページの表現では「一部が早期アクセス」です。他社と比べるときは、対象、接続先、提供段階、料金を同じ項目で並べると違いが見えます。
公式ブログに載っているその他の数値
製品ページ上の連携先は「100超」です。ブログには、最新のTPU 8iシステムの価格対性能比が前世代比で80%向上したとの記載もありますが、これはインフラの数値で、Geminiエージェントの業務効果を示すものではありません。

